iimon TECH BLOG

iimonエンジニアが得られた経験や知識を共有して世の中をイイモンにしていくためのブログです

不気味の谷から考える:違和感とユーザー体験

はじめに

本記事はiimon Advent Calendar 2025 23日目の記事となります!

みなさまごきげんいかがでしょうか。

株式会社iimonでエンジニアをしているtakuです。

寒い日も多くなり冬らしくなってきましたね。

さて、今回はアドベントカレンダー23日目ということで、ずっと気になっていた"感覚"について少し掘り下げてみました。

最近ではAI活用が多くの領域で推進されており、弊社もまさに取り組んでいる真っ只中です。

私は小さい頃から、”人っぽく見えるけど人ではない何か”というものに対して漠然と違和感を感じていました。

例えば、SF映画などにも出てくるリアリスティックなアンドロイドロボットや、街中で見かけるオブジェなど様々です。

何がそうさせているのか、ずっと考えてきましたが、”これだ!”という定義やその感覚を裏付ける根拠のようなものはなく、悶々としていました。

そんな中、「不気味の谷メイク」というものがSNS上で流れてきました。インフルエンサーなどが纏っているそれはなかなか不気味でした。人ではあることはわかるけどなんだか違う、不気味だ、という感覚を強く感じさせられました。

調べてみると、不気味の谷現象という仮説を元としているようです。漠然と持っていたこの感覚に名前があったのか、という発見でした。

当時はあまり深堀せず満足していたのですが、ふと、最近のAIトレンドにも少なからず関係するのでは?と思い、調べがてら記事にしてみました。

不気味の谷

不気味の谷(Uncanny Valley)とは、ロボット工学者・森政弘が1970年に提唱した概念です。

人間とロボットや人形などとの類似点が増加すると、ある程度までは親和感が増すが、ある一定のポイントに達すると、強い嫌悪感や違和感を覚え親和感が減少、その後、完全に人間と見分けがつかなくなると再び親和感が回復する。といったものです。この親和感が急激に低下した領域が谷のようになることからこのように呼ばれています。(図1参照)

図1: 不気味の谷を示すグラフ。Mori, M. (1970/2012). The Uncanny Valley. IEEE Spectrum. (MacDorman & Kageki 訳) を基に作成

類似度が低い 類似度が高い
親和性が高い ぬいぐるみ 健康な人間
親和性が低い 産業用ロボット 精巧な義手 ←不気味の谷

また、森氏は動作も関係するとしています。例えば、日本の文楽人形は表情などは人間らしく見えますが、サイズや質感などは人形のそれです。しかし、人形浄瑠璃で演じられる時はリアルな動きを見せます。森氏によると、文楽人形は精巧な義手と健康な人間の中間あたりに位置します。

動き、つまり生き物である要素が加わることで人間らしさも高まり、さらに不気味の谷も深まると言うのです。動かないはずのものが動いたり、など予想しない出来事なども不気味の谷に関わると言えるのではないでしょうか。

類似度が低い 中間 類似度が高い
親和性が高い ぬいぐるみ 健康な人間
中間 文楽人形
親和性が低い 産業用ロボット 精巧な義手 ←不気味の谷

これらはロボットや人形など実体があるものが中心であり、実体のないAIとは直接的に関係があるかはわかりません。

では、中心をAIとした場合、不気味の谷はどのように関係するのでしょうか?

AIにおける不気味の谷

AIにも不気味の谷はあるのでしょうか?

ひとまずAIと不気味・違和感に関してリサーチをかけ、その結果を基に不気味の谷が当てはまるかみていこうと思います。

動画生成AI

これは最近よく見かけますよね。SNSなどでフェイク動画などを私もよく目にします。

以前Geminiを使って試したことがあるのですが、1から指示した場合はなかなかのクオリティでした。

以下は「メリーゴーラウンドに乗るリアルな男性の動画を作って」と指示し作成した動画をgifにしたものです。

シチュエーションによっては本物と見分けがつかないものも多いですね!

ただ、静止画を動画にしたものは不気味さを覚えるものが多く見られました。

体が想定しないおかしな動きをしていたり、現実ではあり得ない歪みを生んだりと様々。

写真という元はリアルな素材にAIにより動きを持たせることで違和感が生じています。

これは高い類似度に動きをつける、そしてそこに追加要素として”非現実的な動き”というものも加わり、不気味の谷に落ちていると言えるのではないでしょうか。

AIのハルシネーション

画像や動画のように視覚的ではなくとも、違和感や不気味さという要素があると、不気味の谷のような現象が起きていると言えるのかもしれません。

ハルシネーションとは

AI のハルシネーションとは、AI モデルが生成する不正確な結果や誤解を招く結果のことです。(出典: Google Cloud「AI ハルシネーションとは」)。

つまり、誤った情報を伝えたり、無いことをあると言ったり、あることを無いと言ったりなどをすることがあるということです。

AIチャットはあくまでもそれぞれのAIモデルを基に結果を生成するだけで、本当の人間と会話しているわけではありません。これは当然のように思えますが、文脈理解の精度も上がる中、AIチャットは非常に人間らしい振る舞いを実現しています。と同時に、無機質な機能性も併せ持ちます。

高い機能性に過度に期待しすぎた場合、明らかに正しくない情報が伝えられるのはユーザーにとって違和感、そして不信感を与えるでしょう。

AIから考察してみた結果、不気味の谷は、以下の要素と関係があるように思えました。

  • 予測できない
  • 意図しない
  • 認識と異なっている

以上の要素を踏まえ、AI利用における「不気味の谷」を概念図にしてみました。(※あくまで個人的な解釈によるイメージです)

AIの人間らしさとユーザーの安心感・信頼感を軸とした独自グラフ

開発と不気味の谷の関係

これまでは主にユーザー視点から考察してきました。 では、開発者視点で見る場合、不気味の谷はどのように関係し得るのでしょうか。

見た目や感覚という点からではなく、一度解釈を広げ、システム挙動などの「期待値とのズレ」という観点から見てみました。 しばらく記事や論文を探っている中、Martin Fowler氏のブログに以下のような記述を見つけました。

It's easy to get trapped in an uncanny valley where things work mostly like the native controls but there are just enough tiny differences to throw users off. With UI controls you have to be really anal to get the behavior “just right”.(ネイティブコントロールとほぼ同じように動作するものの、わずかな違いがユーザーを混乱させるという不気味の谷に陥りやすい。UIコントロールでは、動作を「完璧に」調整するには非常に細かいところまでこだわる必要がある。)(DeepL訳)

出典: Martin Fowler「Cross Platform Mobile」 https://martinfowler.com/bliki/CrossPlatformMobile.html

"uncanny valley"(不気味の谷)という言葉が登場していますね。 読んでみると、これはUIにおいてユーザーにおける混乱が不気味の谷に陥る原因となりうるということを主張しているようです。つまり、開発においても不気味の谷は存在し、それはユーザー体験に紐づいていると言えるのではないでしょうか。

また、生成AI技術において不気味の谷に陥ることを避けるための考え方として以下のように述べているものもあります。

our expectations about what generative AI can do and where it’s effective must remain provisional and should be flexible.(生成AIが何を成し遂げられるか、またどこで効果を発揮するかについての我々の期待は、暫定的なものであり続けるべきであり、柔軟であるべきである。(DeepL訳))

出典: Ken Mugrage and Srinivasan Raguraman「Reckoning with generative AI’s uncanny valley」 https://www.technologyreview.com/2024/10/24/1106110/reckoning-with-generative-ais-uncanny-valley/

これは、生成AI技術を利用する全員に言えることではないでしょうか。 日に日に向上するAI技術は、私たちに恩恵をもたらすことが多いです。しかし、過度な期待や仮定の上でそれを使うことは、思わぬ結果をもたらすことにつながるかもしれません。 AI技術を利用する上で、適切にその役割と能力を認識することは混乱をさけるために必要そうです。

不気味の谷を避ける配慮

ではサービスとしてAI機能を提供する側としてどのような配慮が必要なのでしょうか?

これまでの考察をもとに、以下を挙げてみました

  • 画像や動画などはAI生成だとわかるラベリングをつける(ウォーターマーク
  • チャットアイコンなどはAIであるということを分かりやすくする
  • 不明なことや不可能なことを明確に示すこと(それを伝えること)

が、既に多くのAIツールにも見られますね!(書いた後に気づきました)

つまり、不気味の谷を考えるということは、大きくみると、ユーザー体験を考えることにも繋がっているということではないでしょうか。

多くのユーザーにとってAI技術そのものがブラックボックスのようなものに思える中、

我々技術者はできる限りの理解、そして配慮が必要です。

ユーザー体験という点も重要ですが、誤った情報などが混乱を招かないようにするためにも、こうした配慮が不気味の谷を避けることにも繋がりそうです。

さいごに

不気味の谷というふと思い出したワードからいろいろな情報を得ることができました。

あくまで考察という点にとどまりましたが、少なくとも不気味の谷はロボットだけに限らない、時代によってその概念は広がるものだということは感じました。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

明日の担当は、みんなから頼られる私の大事な飲み仲間(と思っている)のhayashiさんです!

弊社ではエンジニアを募集しています!少しでもご興味がありましたら、ぜひカジュアル面談でお話しましょう!

iimon採用サイト / Wantedly

参考

https://spectrum.ieee.org/the-uncanny-valley

https://dspace.mit.edu/handle/1721.1/159096

https://www.technologyreview.com/2024/10/24/1106110/reckoning-with-generative-ais-uncanny-valley/

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/29974100.2025.2457627#d1e125

https://martinfowler.com/bliki/CrossPlatformMobile.html

https://artificialintelligenceact.eu/high-level-summary/